不妊の鍼灸治療

不妊治療の前に

不妊治療の前に、大切なことがあります。

そもそも、いつ授かってもおかしくない夫婦生活を送っていますか? 

タイミングを見計らうばかりで、子作りのためだけの関係に陥っていませんか?

いずれかが疲れすぎて、関係自体がなくなっていませんか?

あるいは、行為自体に不慣れであったり、嫌悪していませんか?

子供は、授かるだけではありません。出産、そして子育てが待っています。

なによりもまず「夫婦の関係が良好であること」

医療の現場では、生殖にばかり目が向けられるのみで、こうした自明のことは問題にされませんが、もっとも根本的な問題です。

不妊治療をしている夫婦の正確な統計は不明ですが、来院される方々のほとんどが、器質的な問題の前に、こうした問題を抱えている、あるいは、不自然で無理のある不妊治療のためにそうした状態に陥ってしまっています(夫婦関係がぎくしゃくしているならば、マーク・ローレンス監督映画「噂のモーガン夫妻」をおすすめします。見終わる頃には、二人の気持ちも変わっているかもしれません)。

川島雄三監督の「愛のお荷物」という映画に、「四十八の恥かき子」とか「四十八の産み止め」という文言が出てきますが、映画の題が示しているように、切に「望むもの」ではなく、自然にまかせれば「できてしまうもの」だということを忘れてはならないように思います。ある年齢になれば、避妊するよう教育されるのはそのためでしょう。そして、「あきらめた頃にできた」という話をよく聞くのもうなずけます。

単なる個人の生殖能力を問題とする前に、まずお互いの関係を大切にしてください。

今、しきりと加齢に伴う卵子の老化や、男性の精子の減少や運動率低下がさけばれていますが、個人差のある事柄です。女性では四十歳を過ぎての初産も、男性では六十代での子供も決してめずらしいことではありません。
こうした差はどこから来るのでしょう。
「小児鍼のこと」(こどものこと>脾の「成長」を支えるものと妨げるもの)に触れましたが、「食」と「知恵」の問題も看過できません。

ここでの再説は控えますが、その人を形作り元気さを左右する「食」人として大切な何か、そして、生きるための「知恵」についても、じっくりと二人で考えてみてください
それは、二人だけではなく、あなた方の子にも受け継がれる大切なことなのです。

そのうえで、様々なことを進めていくことがなによりも肝要です。

近頃、ようやくニュースになった「香害」について書いておきます。不妊に関連する「知恵」のひとつでもあります。

よく使われている洗剤や柔軟剤の業務用ボトルにはには「GHS」の表記*があり、「生殖能及び胎児への悪影響のおそれ」と小さく明記されていますが、なぜか少量の一般用には表記がないのです。
 *「GHS」の表記は、例えば調理器具に使えると謳うアルコールスプレーにさえ書かれています。食品にかかっても安全なアルコール製剤(食品添加物)と銘打っていますが、いったいどちらを信じればよいのでしょうね。ロイターの記事「EU、エタノールの「発がん性物質」指定検討 手指消毒に影響=FT」もありますし、そもそも過度な除菌や消毒は、かえって自分を構成する内外の常在菌を殺すばかりでなく、日頃、自然に処理している雑菌などに対する抵抗力も落ちる一方です。特にこどもには悪弊ばかり。公園など外で遊んだり、こども同士で接触することで獲得していく免疫が備わらず、「ひ弱」で「病弱」なまま育っていくことになります。


また、消毒薬、界面活性剤、柔軟剤、シャンプーなどの帯電防止剤に使われる第四級アンモニウムカチオンは、健康にさまざまな影響を与える。例を挙げていくと、軽度の皮膚や呼吸器の炎症から皮膚の焼灼性熱傷、胃腸炎、吐き気、嘔吐、昏睡、痙攣、低血圧、死などがある、と。
よくよくお考えください。
当院では、手洗い(MIYOSHIシャボン玉せっけん)、食器洗剤(MIYOSHI、シャボン玉せっけん)、洗濯洗剤(ASK株式会社のえみな[siemina])、すべて無添加のせっけんを使っています(私は歯磨きにも手洗い用石鹸です)。また、洗濯時の漂白剤は酸素系漂白剤(過炭酸ナトリウム)、柔軟剤にはクエン酸を使っています。息子のサッカー後の靴下や衣類のすごい臭いや、洗濯後にも残る臭い、あるいは汗をかくと匂い出す臭いなど、下洗いなしでも消えています。もちろん、泥まみれの靴下は、下洗いすることをお勧めします。
 

「RNらりりん」さんの記事より
X「@M43129106」さんの記事
「食の未来を本気で考える一般人」さんの記事より

「臭い」に関連して、国立大学法人東京農工大学大学院工学研究院生命機能科学部門の福谷洋介助教とエステー株式会社の共同研究チームの「嗅覚受容体の応答を指標に実悪臭を消臭することに成功」にも驚きを隠せません。「市販されている消臭剤のなかには、くさいにおいを消すために強いにおいでマスキングする方法をとるものがありますが、その消臭剤に使われている香料のニオイ自体をくさく感じる人もいます。近年、強すぎる香りに対して化学物質過敏症への影響が問題視されており、解決が期待される課題の1つとなっています」として、「におい受容体の悪臭原因分子に対する応答を抑えることで、実用的な消臭作用のある香料物質を発見」し、その「香料物質」による「におい受容体の応答阻害を利用した消臭方法は、生活空間における悪臭を従来の強い香りで覆って消臭するのではなく、ヒトの嗅覚の受容機構を利用することで、効率的に消臭することを可能にする技術」と言う。
要するに「臭いものに蓋をする」ことから脱却して、「人の嗅覚を麻痺させて、単に悪臭(とやらを)を感じなくさせる」というもの。
「香害」対策も念頭にあるようですが、はたしてすばらしい技術なのでしょうか。少なくとも私には、大の大人がまじめに考えたとはとても思えないような「幼稚な発想」を、できてしまうからと、なんの疑いもなしに実際に作り出した「人の野生、能力を壊すおそろしい技術」にしか見えません。「臭いには理由がある」わけで、これでは「危険の察知ができなくなる」ことと同義。「大人なのにそんなこともわからないんだね」と言われても仕方のないように思いますが、私がおかしいのでしょうか。お勉強のできる人の考えることはまったくわからないですね。そもそも「臭う」ことのなにがいけないのでしょう。ウイルスや菌の消毒と同じく、そんなに嫌なら、人がこの世界から消えてしまった方がよいと考えるのが「まとも」でなないでしょうか。問題視するのはいつも人の側なのですから。

 

人は「もの」ではない

現在の生殖医療は、人を「もの」扱いした究極の世界への入口と言っても間違いではないでしょう。なぜなら、『すばらしい新世界』で描かれる「ボカノフスキー法」が、高等研究院ヒト生物学高等研究拠点(WPI-ASHBi)の斎藤通紀教授・拠点長や村瀬佑介特定研究員、横川隆太博士課程学生らが生殖医療を進めるうえでの研究成果と謳った「ヒトiPS細胞から卵子と精子のもとを大量作製」として現実に進んでいるからです。また、「人口子宮」もしかり。子孫繁栄社会構築チームが提言する「望めば誰もが、将来に夢と希望を持って 子供を産み育てられる社会」では、「完全なる人工子宮」や「男性でも妊娠できる選択肢」も例として挙げられています。まさか男性までとなると、なにがなんだか。映画「ジュニア」も問題ですが、それも現実味を帯びてきていますね。最終的には、京大発の「孵化条件づけセンター」もきっと夢ではないでしょう。そして、あなた方が胸を踊らせているのであれば、そういう社会へとひたすらに突き進むことでしょう。親のない、家庭のない、個(の生死)が完全に管理された世界へと。

余談ですが、『すばらしい新世界』でおなじみの「睡眠学習」を使い、我が子に「医者になる」と聞かせ続け、その子はとうとう医学部へ進学したという現実を目の当たりにしたことがあります。そして、その子は「楽な皮膚科を選ぶ」と言い切るという始末。「西洋医学の本領は外科ですよ」と言ってもピンとも来ない有様。「記憶力」が人より優れ、ちょっと「お勉強」ができる者が、楽に儲かる仕事として選ぶというその価値観は、私のようなできの悪い人間にはまったく理解の及ばないお話でした。それに類して、私が通った鍼灸大学(当時は日本唯一)では、医学部に入れずにいやいや来ている学生がそこそこいました。そのほとんどの親が医者で、なんでもいいから医療系(鍼灸師の仕事は医業類似行為であり、医療系ではないのですが)にとのことなのでしょう。本人達のそのやる気のなさと、高価な衣服や外車などがあいまって、なかなか壮観でした。また、その中には卒業後、友人がすでに医者になって、いい給料をもらって、もういい車に乗っているなどとうらやむ者もあって、悲惨と言うよりほかはありませんでした。「学歴」や「生存競走」にどっぷりつかって抜け出せない様をまざまざと見せつけられ、考えさせられましたね。そんなことで人に上下をつける思考は、親の影響も少なからずあるでしょうし、あるいは親が子を思い通りにしようと仕向けた不幸の結果なのかもしれません。来院する患者さんの中にはそこそこの社会的地位にある方もおられますが、残念ながらその方々がすべて品位があるとは言えず、成績優秀者の優越感や下々を見下すような横柄な態度をかくすことなくむしろ誇示する、それでいて靴やスリッパの脱ぎ履きすらまともにできない、「お勉強」だけできればいいと育てられてきたのがありありとわかる子供のままの大人。そうでなくとも、多くの方は学校教育の賜物であるところの権威主義になずみ、人を学歴や職種、役職などで判断する癖がついておられるようです。「成功」=「地位」=「お金」=「飽くなき物欲」、このむなしさ、おわかりになるでしょうか。「ひがみ」などではさらさらなく、「大切なこと」はそんなものではないはず、ただただそう言いたいだけです。

話は戻って、ほかにも映画「デモリションマン」や「ロスト・エモーション」を思わせる、男女関係の忌避(肉体的なつながりや出産は穢れ)や崩壊を助長する「精子バンク」や「精子凍結」*。「結婚も出産も女性主導から“自分のタイミング”で 精子凍結する男性たちの意識の変化」では、「結婚前の早い段階から健康状態や妊孕性を測る検査を受けたり、生活習慣を整えようとしたりする動きが顕著になってきた」こと、「年齢をはじめ、日頃の生活習慣も精子や卵子に影響を与えるという認識が少しずつ広がってきている」こととして評価しています。もちろん、そこは私も評価したいですが、やろうとしていることはあくまでも男女の関係を置き去りにした、「卵子」と「精子」をただ「人工受精」させた「受精卵」を用意し、「着床」させ、ただ「子」を作るという、無機質な世界。
それでもあなた方は、そのようにして我が子を望みますか?
そのことを止めることはもちろん、否定することもできませんが、その後のことをよくよくお考えいただければと思います。

*ほかにも、『1984年』では「(党は)公式に認められている結婚の目的は一つ、党に奉仕する子どもを作ることだけである。性交は、浣腸と同じように、いささか不快な軽い処置であると看做されるべきなのだった。これもまたはっきり語られるわけではないのだが、党員は誰もが子ども時代からそれとなく刷り込まれるのである。〈反セックス青年同盟〉といった組織すらあり、男女ともに完全なる禁欲を目指すべきであると提唱していた。子どもはすべて人工授精(ニュースピークでは〈アートセム〉という)で生まれ、公共の施設で養育されるべきだというのである。(中略)党は性本能を抹殺しようとしていた。或いは、それが不可能であれば、性本能を歪め、汚そうとしていた。(中略)そして女性に関して言えば、党の努力は大筋において成功しているのだった。(早川書房新訳版102〜103頁)」と描写されています。どう感じますか?

 

鍼灸の治療

来院するのは女性ばかりですが、来院できない(あるいはしない)男性は、多忙すぎて精力が減退していることが多いようです(もちろん、共働きの場合も少なくありませんから、女性も同様に疲労していることもあります)。
本質的に言えば、どちらに問題があるかということが問題なのではなく、片方にまかせっぱなしにしていることが問題なのです。不和のもとですからね。もし努力すべきことがあるとすれば、ともに行動するということでしょう。それを「協力」と言うわけですが、できるかぎりそのようにしていただきたいものです。ほかの誰でもない、夫婦のことですから。

鍼灸(井上系経絡治療)の本質は、全身的な治療により体調を整え、年齢相応の元気さを発揮できるように後押しすることですから、不妊に特化した何かをするわけではありません。しかし、こうしたスタンスこそ、生殖にのみ着目した治療の限界を補うものであるばかりか、最初に取り入れるべきであるということを、賢明な貴方は、きっと理解されることと思います。

こうした理由から、妊娠をのぞまれる場合は、夫婦そろって治療することが最善と考えております。

当院では、不妊にまつわる全体の問題を対象にした治療だけでなく、産前産後にわたる期間の体調を整えるお手伝いもします。産前の治療では安産や胎児のより順調な成長のために。産後はなによりも肥立ちが大切。同時に、赤ちゃんの発育も。鍼灸は、そのあらゆる面において対応することができますので、ご相談ください。